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2011年06月09日(木)更新

知られざるホルモンの世界



 

ここ最近、業務用の問い合わせが増えてきた。

牛一頭を仕入れたら内臓(ホルモン)も含まれていると思っている方が多い。

なかには、角や皮はどう処理すればいいのか?

などと質問してくる人もいる。

過去に1度だけ、牛を買いたいと言ってきた人がいた。

私は枝肉だと思って話をすすめていたのだが
いや、普通そう思うでしょう。

けど、どうも話がかみ合わない。

輸送方法について尋ねられたので、
ヤマトのクール便で送りますと答えたところ、

牛が寒くないのかとか、
ヤマトは牛まで運ぶようになったのか、などと言い出したので
ここでやっと生きてる牛のことを言ってるのだと気づいた。

これネタでもなんでもなくマジな話です。


冒頭の話だが、牛一頭(枝肉)仕入れても内臓は含まれない。

屠畜した段階で、枝肉と内臓は別ルートとなり流通されていく。

牛は、農家で飼われているときから耳票によって管理され、
枝肉から精肉になってからもトレーサビリティで履歴を追跡できる。

しかし、内臓は古くからの商習慣が関係していることもあり、
一般の方には、いや、業界の方でも理解しにくいところがある。

それと、牛肉の場合、どこのだれが育てた牛なのか知りたがるのだが
内臓に関しては、そこまで細かく関心のある消費者は極めて稀である。

肉屋の店頭やスーパーのパックを見ていただければわかるが、
牛肉の場合、10桁の個体識別番号が印字されているが、
内臓は、なにも表示がない。

原産国ぐらいは表示されてるだろうが、
牛肉のように、内臓に産地やブランドを求める消費者が少ないのが実際のところだ。

だいたいが、インターネットで「黒毛和牛のホルモン」と表示されていようが
「国産牛のホルモン」と表示されていようが、消費者だけでなく、販売者さえ
それが、どこの産地で生産者はだれかなど知る由もないのだ。

ただ、わずかだが例外もある。

生産(牛飼い)と販売(精肉店や焼肉店)を行っている場合や
当店のように、生産者と直で取引している場合だ。

この場合に限り、生産者がハッキリとしている。
なんなら個体識別番号の表示も可能だ。

でも何度も言うが、消費者はそこまで関心がないのだ。

関心があるのは、どちらかと言えば“価格”であって
安心・安全は、当たり前だと思っているようだ。

もちろん、安全じゃないものは出回っていないだろうが
“安心・安全”の言葉に慣れすぎていることが、
よっぽど危険だと思う。

表示問題に少し触れると、「黒毛和牛のホルモン」と表示されていて、
それが本当にそうなのかは、販売者はおろか、卸業者ですらあやふやな部分がある。

それほど、ホルモンは見分けがつきにくいのだ。

それよりも、世間に出まわっているほとんどが、輸入品なので
焼肉屋でたれに漬けこまれてでてくれば部位の見分けは困難だと思う。


さて、今日は内臓についてもう少し奥深く書いてみたいと思う。


屠場には、内臓業者が何人も働いている。

若い人もいるだろうが、だいたいは年配者が多い。

一昔前は、旦那さんが牛の解体をして、嫁さんが内臓の“洗い”をやってるパターンが多かった。

早朝からベルトコンベアーで流れてくる内臓を処理し、寒い日も洗って洗って、洗いまくって
昼過ぎにはすべての作業を終了させ、午後からは仕上がった内臓を得意先へ配達に行く。

一仕事終わったら、ゆっくりすればいいのにと思うかも知れませんが、
内臓は鮮度が命ですから、その日のうちに配達するわけです。

いまは、BSE検査に時間がかるので、
翌日に配達することもあるようです。

どちらにしても、こういったルートから流れてくる内臓は鮮度抜群で、
私なんか19歳のときから屠場に出入りして内臓を触っているので
レバーをみただけでも鮮度が分かるというものです。

枝肉の格付けがよかっても、内臓まで良いとは限りません。
このあたりも、牛を知り、内臓を知り、たくさん触わって
まわりから太ったんちゃうの?と言われても食べ続けた経験があってこそだと自負しています。

私は、食べ放題や安売りチェーン店の焼肉屋でホルモンを食べることは
いままでもこの先もないと思います。いやないです。

それは、内臓こそ流通経路にこだわりたいからです。
安い値段だけが前面に立ってしまい、流通経路が不透明な内臓は怖いです。

消費者のみなさんは牛肉同様、内臓にも派手なキャッコピーや
宣伝に惑わされず、奥の奥へと関心を持っていただければ、
より良いホルモンライフが楽しめるかと思われます。

 


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