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2008年04月18日(金)更新

R-40指定のステーキ

牛の価値は見た目で決まる?!

まさにその通りです。
簡単に言えばサシ(霜降り度合い)で値打ちが決まってしまいます。
最近では、テレビのグルメ番組やインターネットなどの影響から、
一般の方も知識が豊富で異常に詳しい方も稀におられます。

先日も某カウンターレストランでシェフがステーキを焼きながら
A5が最高だの、雌牛が良いだのと散々講釈をいただくという光栄にあずかりました。
もちろん私の職業は内緒でございます。

さて、シェフがおっしゃるように雌牛で格付けA5は最高ランクです。
A5ですからBMSも8~12です。
実際にセリでも去勢(オス牛のタマ抜き)より雌牛のほうが高値で売買されますので
シェフの講釈は間違いではないんです。
ただ話が長いというだけで(^^;
詳しくはこちらをご覧ください。

A5でBMS8~12ともなれば、見た目はすばらしく、
味もまさにとろけるような食感が期待できます。

でも、いくら雌牛は脂の融点が低くてあっさりしているといっても脂は脂です。
2~3切れで満足してしまいます。
若い時ならいざ知らず、40歳越えれば胃もたれ、胸やけで食後に胃腸薬、
なんてことにもなりかねません。
実際にがんばって食べ過ぎトイレーへ一直線、
なんてことにもなりかねません。

最近では、生産者さんも利益を追求しすぎて
牛を大きくすることばかりに目がいっているように感じます。
肝心の味を置き去りにしている感が否めませんし、牛への負担も増えるばかりです。
私なんか600kg近い枝肉になんの魅力も感じません。

下の動画はA4のBMS5というごくごく普通の近江牛です。
ただ、私の場合は作り手(生産者)にこだわっているので
食べていただければわかりますが、非常に食感がいいんです。
サシもそこそこあり、食感はあっさりしていて、それでいてコクもある。
食後のコーヒーまで本当に満たされた気持になります。

格付けにまどわされず、売り手が何にこだわりを持って販売しているのか、
そのあたりをじっくり見極めて購入することがおいしいさに繋がるかと感じます。



ちなみに私は上記のサーロインを300g、ペロリと平らげました。
40歳以上の方にこそ食べていただきたいステーキです。

近江牛ドットコム 牧場と食卓をつなぎます

2008年03月22日(土)更新

格付けよりも味

牛肉の評価は『歩留まり』と『格付け』によって決められる。
歩留まり等級は三区分(A,B,C)、肉質等級五区分(1,2,3,4,5)で分離評価されます。
全部で15通りから格付けされ、脂肪交雑、肉の色沢、肉の締まり、きめの各項目から最高の等級5~最低の等級1まで5段階で判定されます。
枝肉重量に対する部分肉重量の割合。その区分を示したのが歩留まり等級です。

BMS

近江牛発祥の地、蒲生郡竜王町の生産農家が集う、近江牛共励会。
1年に1回だけの開催とあって町長自ら先陣を切って盛り上げている。
大会の優等1席チャンピオン牛は、弊社が落札することができた。
そしてもう1頭、澤井牧場さん出荷の枝肉を落札した。格付けA4、BMS8である。

落札から本日で5日目、本来ならもう少し熟成させておきたいところだが
生産者指名で注文が入っているため、捌いてみた。(捌く=脱骨するという意)



格付けが甘いように感じる。脂が多く、BMSも8ではなく7といったところが妥当。
これで味が良くなかったら最悪。
さっそくスタッフ数人と味見をすることに・・・

結果は、ものすごくおいしい。
思った以上にあっさりとしていてコクがある。
胸やけすることもなく、300g食べてみたが胃が軽い。
これならご年配の方でも満足していただけるだろう。

見た目の評価も価格を決めるうえでは現在では重要なのだが
食べておいしい肉を販売しなければリピートされない。

それを見抜いて目利きするのが私たちの仕事である。
生産農家の方には、太らせてむりやりサシを入れる飼育法よりも
牛にも人にも負担がかからない飼育をしてもらいたいものだ。

格付けに関係なく、おいしい肉はそれなりの価格で販売すべきであって、
いくら格付けがよくても、仕入れ値が高くても、CPが悪ければ消費者は納得しない。

もちろん、安さを追求することも大切なのかも知れないが、
食に関して言えば、時として余計に高い買い物になりかねない。

やまけんこと山本謙治氏の著書「日本の食は安すぎる」に
こんなことが書かれている。

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安さだけの追求が、食品偽装を引き起こす

新鮮で、安全で、美味しい食品は、高くて当たり前なのだ。
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まったくもってその通りである。

2008年03月21日(金)更新

懲りない面々

大阪市の食肉卸業社が、松阪牛や但馬牛などと偽り、産地の異なる牛肉の商品約1・6トンをインターネットなどで販売したとして、農林水産省は19日、日本農林規格(JAS)法に基づき、改善を指示した。牛の個体識別番号も偽って販売していた。

通販サイトに掲載されていた同社の松阪牛商品が市場価格より安いのに気付き、調査を始めた。商品に付いていた証明書の個体識別番号をもとに、肉のDNAを分析したところ、個体が異なることが判明。

読売新聞の取材に対し、同社幹部は「銘柄牛が足りず、通販担当者が仕入れに困って他の肉で代用してしまった。チェック体制が不十分だった」と釈明している。
YOMIURI ONLINEより抜粋


昨年から、講演の初めに15分程度の時間をいただいて、偽装のしくみについて話してきたが、まさに私が話している内容を地でいくような出来事、事件が発覚。疑わしい仕組みで販売している企業が多い。

名もない「牛肉」より「和牛」のほうが売りやすいし、さらにブランド牛(松阪牛、神戸牛、近江牛など)の冠があるほうが、売りやすい。牛肉に限らず、人気があるのはNBよりPBであることは明白ではあるが、唯一の難点がNBのように大量生産ができないこと。ここに大きな“偽装”がうまれるのです。

一般的には、ネットで検索、またはテレビ、雑誌の掲載を見て問い合わせがきます。御社の商品を扱いたいと。ほとんどの場合が大量を前提とされたお話です。

取引が開始して、売れはじめる(売れすぎる)と今度は量販店が目をつけます。
小売店もスーパーでも扱いたい。という風になります。

そして取引がはじまってしまう。

限られた原料なのに大量販売のシステムにのってしまうとどうなるのか。

商流

限られた原料なので、どこかの行程で増量行為や生産方法の変更(大量生産型)が行われるようになります。当然そこには大きな利益が発生し、利益が上がれば上がるほどやめられないということになります。

結果どうなるのかというと、原料生産以上の商品が市場マーケットに流通するということになります。

弊社には毎日のように全国から問い合わせがあります。
1例を紹介しますと、現在近江牛を使っているが、どうも不透明な部分が多いので弊社と取引したい、とお話をいただく。
聞けば近江牛のサーロインステーキを100gあたり800円で仕入れているという。
到底考えられない値段で、私の提示したまともな値段と折り合わない。

そこで私がいつも思うことなのだが、安全性を求めてきたのに正当な価格を言うと取引が成立しない。利益を確保しなければいけないのはわかるが、良いものを安く仕入れたいということは現在では多くのリスクを伴うということを大きな企業さんこそ理解できていない。

仮に、このような大口の取引がはじまり、大量販売のシステムにのっかると、近江牛のような限られた原料の場合、しだいに商品が不足しだして、販売までの過程において何らかの増量行為や生産方法の変更(大量生産型)が行われるようになる。

わかってはいるが、一度取引がはじまってしまえば欠品が許されない。

もう一度原点に回帰すべきだと思う。

2008年02月25日(月)更新

肉は赤身の時代に「脱:霜降り」

サイト内のコンテンツを充実させるために“よみもの”のページを
作ることにした。

といっても記事が少ないので
これから思いついたことをこのブログに書き留めていくことにした。
「カテゴリ1」に蓄積していきます。

肉好きの方はぜひご一読いただきたい。

第一回目は「肉は赤身の時代に」

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日本人の霜降り好きは有名だが、そろそろ“霜降り神話”も終わりを告げようとしている。霜降り肉は確かに見た目もキレイだし、需要が多いのは確かだが、じつは肉好きが愛してやまないのが“赤身肉”である。

霜が降ってるだけで高級肉と勘違いしている諸兄。テレビのグルメ番組で「おいし~い」しか言えないなんちゃってグルメ舌のタレント姉。
ぜひ、赤身肉の魅力を知ってほしいものだ。

ボクも含め、肉屋の連中はサシが入った肉はそんなに食べない。
1切れで充分で、特上ロースなんて頼んでしまったら2~3切れ食べて胸やけ、胃もたれでごちそうさまになってしまう。
せっかくの「今夜は焼肉」こそ、ゆっくり時間をかけて、じっくり“焼肉道”を味わってほしいものだ。

最近では、A4とかA5といった肉の格付けを知ったかぶりする人がじつに多い。もちろんちゃんと理解している方もいるだろうが。

少し専門的な話になるが、A5のBMS12なんていうと、いわゆるチャンピオン牛クラスの肉になる。しかし、このクラスのロース肉ともなるとボクにいわせりゃ、そんな脂だらけの肉、食べれたもんやない。まさに1枚で充分。ごちそうさまである。

最上級の肉こそ“赤身”に注目したい。
部位的に言うと、モモやウデが赤身系になるのだが、さらに細分化すると、トンビとかイチボとか希少部位と呼ばれるパーツに分かれる。

それぞれに味わいがあり、肉自体の旨味が味わえる。さらに赤身は量が食べられるので部位ごとに食べ比べるのも楽しい。

赤身は硬くてパサパサとしたイメージを持たれてる方も多いと思うが、安もんの肉は確かに硬いし焼きすぎるとパサパサしている。実際、ボクも焼肉屋で肉片が歯に挟まって、爪楊枝でガシガシやってサシ歯がとれた苦い経験がある。

A4やA5の肉こそ赤身をチョイスしていただきたい。このクラスのモモ系だとキレイなサシが入っている。しかもあっさりしているので何枚でもいける。レアで食べれば濃厚な肉汁が口の中で爆発する。

ランプ(ランイチ)なんかステーキにすると最高である。わさびをちょこんと乗っけて醤油で食べれば完璧な赤身党を自負できる。

肉の濃厚さ、旨味を追求するには赤身に限る。
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