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2009年05月02日(土)更新

情報発信がもたらす効果

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肉牛ジャーナルという本がある。
その名の通り、肉牛専門書である。

畜産関係者以外は、
たぶん興味がないであろうという内容ばかりだが
牛好きにはたまらない1冊である。

獣医師の松本先生のコラムや長岡さんの
照長土井物語など読み物としてもおもしろい。

5月号は、木下牧場の特集が組まれていて
弊社との取り組みも少し紹介されていた。

木下牧場さんは、ライブカメラでの肥育管理や
ブログでの発信を積極的にやっているので取材の対象になりやすいのだが、
こうやって掲載された雑誌を見ると、改めて“情報発信”することの大切さを
感じさせられる。

今年の3月頃だったか、四国は某県の方から焼肉店をやりたいので
相談にのってほしいと問い合わせがあった。

こだわったお店をやりたいとのことから、
まずは、弊社の取り組みと木下牧場さんの牛舎を見学してもらい
商品構成やアイテムまで、アドバイスさせていただいた。

木下さんの近江牛指定で、先日オープンされたが
ありがたいことに連日長蛇の列で大盛況とのことである。

ゴールデンウィークが終わったら、お伺いする予定だが、
気になるのか、木下さんはすでに訪問済みである。
自身が育てた牛が、どのように料理されているのか、そしてお客さんの評価は
いかなるものなのか、直接聞きたいと行動に移すバイタリティはさすがである。

こういう生産者がつくる牛は、ほんまにおいしい。
格付けや等級では評価できない“旨味”がある。
そして、なによりも真面目である。

これからも、真面目な生産者が育てた牛を、
きれいな心で商いされている方に繋いでいきたい。

2009年03月08日(日)更新

敬牛の集い

後藤牧場さんに「なかのり」という名前の牛がいます。
1990年の初産をかわきりに産みも産んだり19産もしました。
牛の寿命はだいたい20歳平均ということを考えると、
「なかのり」がどれだけ元気な牛なのかお分かりいただけるだろう。

さて、19産もした牛は、通常は廃牛扱いされることがほとんどだが、
後藤さんは「なかのり」の命が尽きるまで飼い続けようと考えていました。

しかし、本当の意味での“はなむけ”は、おいしく料理してたくさんの人に
食べてもらうことです。

後藤さんは京都の焼肉料理屋「南山」なら、「なかのり」を任せられると
楠本さんに命を繋ぐことにしました。

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後藤さんの想いを受け継いだ南山の楠本さんは、出荷の当日、お客様や
子供たちを連れだって「なかのり」の見送りにやってきました。

19産した牛を再飼育して肉牛にするという試みは、私が知っている限りでは
はじめてのこと。再飼育に関して、ご指導いただいた畜産農家のDr.コトーと
慕われる松本先生も鹿児島から駆けつけてくださった。

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牛肉と牛は違うものだと思っている子供がいるという事実。
わたしたち人間は命あるものを食べて生きています。
肉だけではなく米も野菜も命を宿しています。
そのような現実に背を向けず、子供たちに伝えることも大切なことです。
子供たちは絵を描いて「なかのり」に捧げます。

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松本先生の解説は丁寧でわかりやすく、子供たちの目が輝いています。

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「なかのり」が旅立つ時がやってきました。
子供たちの「なかのりさ~ん」というかけ声とともに「なかのり」は一鳴きして
みなに別れを告げるかのように旅立ちました。

子供たちの笑顔での見送りが印象的でした。
今日の子供たちはきっと心やさしく、たくましく育ってくれることでしょう。

さて、19産した牛の肉質はいったいどのようなものだろうか?
そして南山ではどのように料理するのだろうか?
このような牛を食べる機会はこの先たぶんないだろう。

畜産関係者だけでなく、一般の方々にもぜひ味わっていただきたい。
3月20日から南山でお披露目です。

春の近江牛祭り(3月20日~3月31日)
◆ きたやま南山 ◆
京都市左京区下鴨北野々神町31
Tel:075-722-4131

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お疲れ様でした。

2009年03月07日(土)更新

儲からない理由

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ありがたいことに毎日のように新規取引の問い合わせをいただく。
近江牛に関しては、私がすべて窓口となっているのだが、
ここ最近の問い合わせの多さには驚くばかりである。
しかしながら正式な取引に繋がることは少ない。

見積もり依頼もほとんど受けていない。
北海道であれ沖縄であれ、まずは滋賀まで来ていただく。
この段階で8割の方から連絡が途絶える。

熱心な2割の方には、店舗をみてもらい、スタッフをみてもらい
生産農家さんをみてもらい、牛舎をみてもらう。

価格や仕様はそれからで、
とにかくすべてをみてもらうことからはじめる。

問い合わせいただいた内容をすべて受け入れれば
売上も伸びるのだろうが、同じ気持ちを持った方と仕事がしたいという
“想い”の部分を優先してしまう。

けっしてお客様を選んでいるわけではないが、
小さな会社だからこそ譲れない部分がある。

今日は、四国の某県からおいでいただいた。
まずは実店舗をみていただき、想いの部分をじっくりお聞きした後で
木下牧場さんへご案内した。

雨の中懸命に話を聞く姿に
この方になら真面目な生産者が育てた近江牛を託したいと
思える、そんな出会いの1日であった。

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木下牧場のさやちゃんが手を差し出すと牛たちが笑顔で寄ってくる。

2009年01月02日(金)更新

年頭所感

新年あけましておめでとうございます!

総務省がまとめた2009年1月1日現在の人口推計によりますと、
今年のえとである丑(うし)年生まれの人口は1082万人となったそうです。
私もそのなかの1人でして、昭和36年生まれの丑年です。
しかも肉屋をやっているのですから今年は感謝の年でもあります。

さて、1月前半は、初詣の様子やお笑い番組も多く放映されており、
正月ムードですが、後半あたりから、世の中が大変だ、やれ不景気だの
事件がおきただのとよくないニュースが耳に入ることでしょう。

不景気でも結果を出し続けている企業がたくさんあります。
そういった企業をクローズアップせずに、傾いた企業ばかりを目立たせる
ものですから、世間はますます暗いムードになるのではないかと感じております。

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「丑」は誠実で、粘り強く困難に立ち向かう前身の象徴だと言われております。


昨年は飼料や子牛高騰などの煽りを受けまして、多少なりとも影響はありましたが、
誠実な生産者と共に粘り強く困難に立ち向かい乗り切ることができました。

12月は1年で一番忙しく特に29日の出荷に集中するため、毎年スタッフ総出で
徹夜作業となります。
昨年の29日は出荷数も現状での限界を少々超えてしまったか感がありました。
ネット、電話、FAXからと、全国からご注文いただくわけなのですが、すべてお受け
するわけにはいかず早々に販売終了とさせていただきました。

すべて受注すれば売り上げも上がり、会社的には良いのですが、
スタッフに負担がかかり、なによりも私が自信を持って販売できる牛との
バランスが良くない結果が予測できたのです。

近江牛ならなんでもいいや的な商いなら受注しまくり、売上を2倍、3倍に
あげることも可能だったでしょう。
でも、それはできない。そんな商いはしたくないし楽しくない。

●ブランド牛、A5等級、雌牛・・・

一切こだわりません。

ブランド牛にこだわらないって、近江牛はブランド牛でしょう?!
とお叱りを受けそうですが、近江牛がすべて“うまい”かと言えば
けっしてそうではないのです。
それを見極めるのが目利きであり、畜眼力なのです。
これは、松阪牛でも神戸牛でも米沢牛、前沢牛、宮崎牛、等々
すべてに言えることなのです。

当店では私が良く知った生産者が育てた牛しか販売しておりません。
どんなに格付けの良い牛でも交流のない生産者からは仕入れることはありません。
それは、生産者の人間性や飼育環境、飼料に至るまで私の把握していないことは
責任を持って販売できないからです。

なによりも、1つのブランドを追い続けると安定した質が得られないのです。
このような理由から、近江牛だからといって、すべて“うまい”というのは間違った
解釈なのです。

当店の取り組みは、今年も限られた生産者の牛しか販売いたしません。
「近江牛のサカエヤ」ではなく、「サカエヤの近江牛」が当店のこだわりであり、
こだわっていかなれけばいけないことなのです。

余談ですが、生産者はほとんどの場合、夫婦で牛を飼って(育てて)います。
ウソみたいな話ですが、夫婦仲の悪い生産者が育てた牛は良くないんです。

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当店で販売している牛肉の大半は木下牧場で育った純粋な近江牛です。
この笑顔が“おいしさ”に伝播します。


話を戻しますが、A5等級という謳い文句も私から見ればなんの効力もありません。
確かにサシもきれいだし、食感もとろけるようでおいしいのは間違いありません。
1切れ、2切れ食べるにはそれでもいいでしょう。
しかしながら私が提案させていただきたいのは、胃もたれしないおいしさであり
団欒であり、食後の余韻なのです。

リブロースやサーロインの良さ、ランプやイチボの深みなどを知っていただきたい。
そのためには、見た目のサシ重視ではなく、肉質、脂質重視で必ず私が試食して
納得したものだけを販売させていただきたいのです。

誤解されると困りますので付け加えますと、サシも当然ながら重要です。
しかしながらサシだけを重視しすぎるのではなく、それ以上に味を重視した選定を、
ということなのです。

A5という言葉だけが消費者には伝わり、「A5=うまい」と思いがちですが、
A5とは見た目の評価だけで、味の評価ではないのです。
いいかえれば、芸術的に優れている。ということなのです。
ときとしてA4のほうがおいしい肉もあるのが事実ですし、A3でも十分おいしい
場合もあるのです。

もちろん、生産者は努力してA5にまで育て、評価されることがやりがいであり、
喜びです。その作品を目利きするのが私たちの仕事なのです。

食用にする牛には「雌」と「去勢」があります。
評価が高いのは雌牛です。昔ほどではありませんが市場でも若干雌牛が高く
取引されます。
雌牛は融点が低くとろけるような脂質、といった謳い文句は食通なら一度は
耳にしたことがあるでしょう。
しかしながら、一概にそうとは言えないのが私の見解です。
牛肉にはBMSという1~12の区分があり、A5等級は8以上となります。


A5等級の雌牛でBMSが12ともなればチャンピオン牛クラスです。
“チャンピオン牛”のキャッチコピーをつけて販売している店舗もみかけますが
中身がありません。
チャンピオン牛を販売しているからと言ってその店が優秀なわけではないのです。
お金さえ出せばチャンピオン牛は購入できますし、目利きが優れているからでは
ないのです。
これは生産者の功労であり、努力の結果なのです。

もちろん、チャンピオン牛ともなればとろけるようなおいしさは間違いありません。
ただ、もう一度食べたいかと言えばどうでしょう。
それよりも、日々気軽に購入できるあっさりとした食感でまた食べたくなるような肉を
私は提案させていただきたいのです。

●お時間のあるときにでも

はじめての方へ

安全性について

2009年1月3日の京都新聞より

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「近江牛専門店が極めたカレー」の売上の一部を、琵琶湖環境の保全のために
寄付させていただきます。
初回販売分の売上げの一部は昨年12月に寄附させていただきました。


昨年の11月に2年がかりで開発しました「近江牛カレー」を
販売することができました。
ネーミングにはかなり悩みましたが、「近江牛専門店が極めたカレー」と
少々長ったらしい名前になりました。

日経MJはじめ各新聞社様、リビングはじめ地元紙、
ご購入いただきました方々のブログ、クチコミ等で、発売1ヶ月で初回製造分、
2400食分が完売いたしました。

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昨年12月18日中日新聞に掲載された記事

近江牛一頭まるごと使用しましたので、どうしても販売単価が1食分1,050円と
レトルトカレーとしてはかなり高めなので1年ぐらいかけてゆっくり売れればいいや、
と思っていたのですが1ヶ月で完売したのには驚きました。

現在、第2弾を発売中ですが、昨年末に名古屋のCBCラジオに私自ら出演させて
いただきPRさせていただいた効果もあり、おかげさまで順調よく売れております。

大手企業さんからも取り扱いたいとの問い合わせを何件もいただきましたが、
大量生産できる商品ではないため、ほとんどお断りさせていただきました。
唯一、熱心な企業様1社のみ、販売をお願いすることとなりました。

1月6日には、毎日放送ラジオ「こんちゎコンちゃんお昼ですよ」に
出演させていただく予定をしております。
私の出番は14時15分ぐらいからを予定しておりますのでお時間のある方はぜひ
お聴きください。

さて、今年も昨年から温めておりました新商品が続々登場いたします。
2009年は「楽しい食卓」という当店の理念のもと、「感動」「感激」「感謝」を提供する
プロフェッショナルとしてみなさまにおいしさをお届けさせていただくことをお約束させていただきます。

最後に、本年が皆さまにとりまして良い年でありますよう祈念いたしております。

株式会社 サカエヤ
近江牛ドットコム株式会社  代表取締役 新保吉伸

2008年06月20日(金)更新

間違ったこだわり方

数年前からSA(サービスエリア)の改革がはじまり
県内のSAも以前に比べるとかなり様変わりした様子が伺えます。

全国どこへ行ってもSAのレストランでは必ずといっていいほど
その地の名産にお目にかかれる。

先日、県内の某SAでのこと。
お昼時ということもありほぼ満席状態。
高速のSAということもありお客さんはほぼ他県の方だと思われる。

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近江牛カレー

お客さんのほとんどが頼んでいた「近江牛カレー」
ちなみに上に乗っかってるのはトンカツである。

確かに牛肉らしきものは入ってはいるが
お世辞にも「おいしい」とは言い難い。
ボクの口には合わないだけかも知れないが。

せっかく滋賀に来たのだからと「近江牛」と冠のついた料理を頼む確立は
かなり高いと思われる。

店側も「近江牛」という売りが差別化につながり、その地の名産を販売することで
売上げが上がるであろうという目論みもあるだろう。

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近江牛100%ハンバーグ

こちらは近江牛のハンバーグだがファーストフードMのほうが
ボクの口には合うようだ。

せっかく滋賀に来たのだから近江牛を・・・

そう思って至極当然であり、ボクが三重に行ったら松阪牛のメニューを
頼むであろうし、神戸へ行ったら神戸牛のメニューを頼む確率は高い。

こういったブランド和牛は、ご存知のように仕入れ価格が高い。
店側も使いたいけれど仕入れ価格と販売価格のバランスが悪すぎるので
なかなか商品まで持って行けないのが現状かと思われる。

SAのランチでカレーが2,000円とか3,000円では商売として成り立たない。

1,000円前後で提供するには何かを抑えなければ無理な話であって
その結果、味や品質を落とすことになれば意味がない。

そこまでして「近江牛」を使う意味合いがあるのだろうか。
それよりも普通の牛肉で「おいしい」料理を提供することが
お客さんの目線でもあるし、企業としても長生きできる最善だと思う。

「地域ブランド」というのは原料生産から加工、販売まで、地域に徹してこその
ブランドであり、それでこそ価値のあるものです。

その価値をもっと大切に扱ってほしいしもっと愛情を持って販売してほしい。

生産者からいくつもの手を介するごとに不透明になっていく商流にも
問題があるように思うのだが。
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