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2011年07月27日(水)更新

エシカル・ソーシングな牛肉




 

やまけんさんの講演のなかで、「エシカルな肉」という表現があった。


エシカル?


パスカルなら知ってるがエシカルとはなんぞや。


てことで、簡単に言うと「買い叩いていない商品」ということだ。

欧米ではエシカル・ソーシング(Ethical Sourcing)という考え方があって、
倫理的な調達(仕入)が潮流で、相手企業や国の環境に課題な負荷をかけたり、
低賃金に貶めたりして
はいけないという考え方だ。

意味合いはフェアトレードと同じだ。


さて、放射性セシウムの影響で牛肉の相場は暴落し
生産農家は廃業に追い込まれるほど深刻になりつつある。


第一次産業の産品を叩きまくって仕入れていたスーパーも
なにか事件がおこればバッサリと切り捨ててしまう。


「企業間取引」とはこんなものなのかも知れないが
我が身を守るのに精一杯というところだろう。


2001年のBSE後、業務用の取引が激減したのをきっかけに
仕入れを見直し、生産農家との「取り組み」に重点を置くようにした。



「取引」から「取り組み」へ

「会う営業」から「会わない営業」へ


2004年頃からよく使っていた講演タイトルだ。


この頃より取引の依頼があっても、
いくら利益があがるからといっても飛びつかず
じっくり吟味し、一緒に取り組めるところとだけ付き合ってきた。


ここ最近、放射性セシウムの件で仕入れ先を見直し中という
全国の飲食店から問い合わせが急増している。


大半が、サーロインやヒレ、トモバラの単品取引だが
なかには枝肉を仕入れたいという方もいたりする。

ただ、雌でA5限定とか格付け先行の話をされると
私が取り組んでいることとは相反するのでお付き合いすることはない。
1~2回の取引ではなく、「共に・・・」という考え方なので長続きしないのだ。


牛がなにを食べているのか?

どんな環境で育っているのか?

生産者はどんな人なのか?


格付けや等級はあくまでも結果であって
目指すところは、牛肉を売るのではなく、ストーリーを買ってほしいのだ。


生産者はA5を目指して育てても、A3であったりA4であったり
ときには事故で予定より早く出荷しなければいけないことだってある。


自分の都合だけで商品を買求めると、結局は生産者に負担がかかってしまう。
それよりも、一緒に取り組んだ結果の牛肉であれば、そこにストーリーが描け
商品にも付加価値がつくというもの。


安いモノを求める消費者がいる限り、流通の仕組みはそうそう変えられないが
ここ最近の問い合わせで消費者と話していると、エシカルな肉が求められる時代が
そこまで来ていることは確かだ。

 


 

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2011年07月24日(日)更新

取引から取組へ これ以上の安全がどこにあるというのか




 

当店の牛肉は安全です。


といったところで、なにをもって安全なのか?


消費者が知りたいのはここだろう。


不透明な部分が多すぎて不安になるのも当たり前だ。

スッキリしない見解をニュースで垂れ流すものだから
尾ヒレや予測がついてまわり風評被害となる。

牛の相場もめちゃくちゃで東京なんかひどいものだ。

なぜか近江牛の相場はびゅ~~~んと上昇中だが。


BSEが2001年の9月だったのであれから10年、
1つの節目に今度は放射性セシウムとは、なぜこうも畜産業界ばかりなのか。

そう思っている業界の方も多いはず。

当店ではこの約10年間、もちろんなにもしていなかったわけではない。
どちらかといえば、試行錯誤の10年でようやく形が見えてきたかなというところまできた。

仕入れという概念を捨てて取り組むというスタイルで生産農家さんと二人三脚で歩んできた。

エシカル・ソーシングな取り組みを実行してきたわけだ。

簡単に言うと、 「道徳的な仕入れ」 「安く買い叩いてはいけません」という意味だ。

さて、きたやま南山さんで開催された、やまけんさんの国産丸(短角牛)を食べる会は
各方面から赤身肉の時代がやってきたと大絶賛だった。

翌日は、生産農家の勉強会を一般消費者にも公開するというとってもマニアックな企画が行われた。
しかも、講師は松本大策先生というから人が集まらないわけがない。

さらに、やまけんこと山本謙治氏まで参加というから大いに盛り上がった。

きたやま南山のみなさんを筆頭に、木下さんの牛肉をこよなく愛するプレーゴの岡さん、
ダイニングMOOの井上さんも参加してガッチリと協力体制が整った。


みなさんが勉強中、私と木下牧場の若旦那でやまけんさんを牛舎にお連れして
国産飼料100%で飼育している2頭を見てもらった。


ちなみに、現在問題となっている放射性セシウムの稲わらだが、
木下牧場は100%自家産のためまったくもって心配ない。


取り組みはこちら(→クリック
 

販売はこちら(→クリック






 

通常の黒毛和牛は狭い牛舎に入れられたままなのだが、
木下牧場では写真のように放牧を取り入れているので、のびのびと育っている。

木と牛の間でカメラを構えているのは、やまけんさんだ。

普通は人間が近寄ると逃げるのだが、木下牧場の牛たちは人懐っこいので
やまけんさんも驚ろいていた。


こうやって自家産の飼料をたっぷり食べながら自然環境のなかで育っていく牛たち。


これ以上の安全がどこにあるだろうか。


 




こういった光景がみられるのも繁殖・肥育一貫の木下牧場ならでは。

これぞまさしく但馬系純粋近江牛なのだ。


 




バンビのような子牛に見つめられるとたまらない。

可愛すぎて抱きしめたくなる(重くて無理だが)


 



カメラを向けるとこんな感じで近寄ってくる。

このあとカメラは牛のよだれでベトベトに・・・


1時間2時間なんてあっという間。


時間が止まってしまう、そんな癒しの牧場です。




 


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2011年07月11日(月)更新

枝肉の見方


セリ前の準備室では、購買者が各々枝肉を目利きします。

準備室には生産者も入れるので、ここでは成績表を渡されるような心境でしょう。

さて、枝肉の見方は、まず全体を見て、次いで後足の太さ、内モモの張り、抜け具合

ケンネンの大きさ、背中の脂肪厚、内面脂肪、そして胴切りによる切断面をみます。

重きをおくポイントは人により様々だが、見た目と中身が大きく違うこともある。

見た目の評価が悪くても、中身が良い場合もある。

また、熟成させるうちにサシが出てくることもある。

いわゆる「化ける」というやつだが、経験と知識が重要だが勘と運も必要だ。


 



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2011年07月09日(土)更新

処女牛と経産牛


 

 

逆子で難産でした。


私が木下さんの牛舎を訪ねるときに限って
難産の現場に出くわす確率が高い。


牛飼い仲間や獣医さんやら
みんなの力を借りて無事産まれました。

一般的に出回っている牛肉は、
オスかメスのどちらかになるのだが
オスの場合は、肉質を柔らかくするために去勢する。

飼育の現場でも、去勢することによって
オス牛特有の荒さが軽減され、飼いやすくなる。

さて、今日はメス牛の肉についてお話したいと思う。

メス牛は、肉牛として肥育され出荷されるものと
繁殖用のお母さん牛になるものに分かれる。

肉牛として肥育されるものは、
処女牛とか未経産牛とか呼ばれたりする。

一方、お母さん牛は、何度かの出産を経て
経産牛として出荷される。

価値としては、未経産牛のほうが高く
経産牛はミンチや加工品に回されることが多い。

しかし、肉質はあきらかに劣るが、
経産牛のほうが味わい深いという意見も多い。

実際、とろけるような食感はまったく期待できない経産牛だが
なんともいえない歯にガシガシと食いこみ滋味深い食感は、
一度食べればクセになってしまう。


余談をひとつ。


『松阪の牛肉が丹精をこめて飼育された処女なら、伊賀牛はこってりとあぶらが乗った年増女である』


これは、池波正太郎氏のエッセイ「食卓の情景」の一部だが
最初に読んだとき、未経産牛と経産牛のことかと思ってしまった。

実際には、食通で有名な池波正太郎氏の独特な表現なのだが
この一文を、伊賀地方の田園風景とすき焼きの写真と共に観光ポスターにして貼り出したところ

十数人の女性から「処女とか、年増女という表現は不快」との苦情が寄せられたとのこと。

ポスターは回収したらしいが前後の文章が見えないと、
不快にとられても仕方がないかも知れない。

私なんかは、この本で「伊賀牛」の存在を知り、すぐさま伊賀まで食べに行ったぐらいですから
うまいこと表現したなぁと、当時は感心したものです。


さて、話を戻すと、何度か熟成肉のことを書いてきたが
経産牛こそ熟成肉に向いているのではないかと思っている。


現在、藤井牧場さんの経産牛を熟成中だが、
現在2週目に入ったばかりだ。


 



 


5週目ぐらいで精肉にしようかと考えているのだが
そのあたりの見極めがむずかしい。

来週ぐらいには新しい熟成庫が完成するので
そちらに移して長期熟成を試みたい。

ちなみに、当店では経産牛を近江長寿牛として商標登録し
スポットだが、肉好きの常連さん向けにこっそりと販売していたりする。

予約から熟成期間を経て精肉になるまで最低でも1ヵ月半から2ヵ月はかかるので
待つ楽しみと、手元に届いたときの喜びは言葉では言い表せないものがある。

40分程度じっくりローストして焼きあげる方もいれば
BBQで楽しんだという方もいる。

食べ方はいろいろだが、あるお客様からは
特注しているバーキンの入荷を待つよりわくわくするとのメールをいただいた。

 


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2011年07月08日(金)更新

枝肉の一頭仕入れ




 

業務用として焼肉店やホテル、レストランなどに牛肉の卸もしているのだが
ヒレとサーロインの需要が多い。


たまにの注文ならお受けすることもあるのだが
定期的や大量の注文に対してはお断りせざるをえない。


サーロインだけを月間100kg取引したい。
グレードは近江牛のA4で、できれば雌牛指定で。

なんて問い合わせをいただくことも少なくない。


牛がいくら大きな家畜だからといって
サーロインやヒレばかりがあるわけではない。

バラやモモ、スネなどさまざまな部位が公平に存在する。


オージービーフやノンブランドの黒毛和牛なら
ある程度の数量は確保できるが、出荷頭数の少ないブランド和牛では
単品部位だけを確保することは無理である。


ヒレやサーロインといった使い勝手の良い部位に人気が集中するので
当然ながら高値で販売することになる。

その代わりに、他の部位を安くしてバランスをとるわけだ。


一頭仕入れは、すべての部位をうまく料理することで
全体の単価を下げることが可能だ。

だからここ最近、一頭仕入れの需要が増えつつあるのだが、
かと言って一頭を捌ききれるだけの技量がなければ
かえって高くつき無駄に終わってしまうこともある。


つまりは、暇な店では回転率が悪く肉の劣化が早くなり、
結局は安く仕入れたのに腐食で歩留まりが悪くなってしまった、
なんてことになりかねない。


魅力的な一頭仕入れだが、かなりのリスクがあるので
仕入れ先とじっくり相談しながらよい買い手となって取り組んでいただきたい。

 

 


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